2018年にNintendo Switch向けタイトルとして発売されたJPRG「オクトパストラベラー」を昨年一年かけてプレイし,ようやくクリアしたので感想やら雑感をつらつらと書き連ねます(笑)。
オクトパストラベラーは,「オルステラ」という大陸を舞台に,年齢も背景も異なる男女8人(男4人,女4人)が,それぞれの目的を成すための旅を続けるという設定で,任意のキャラクターを選択してゲームを開始します。ゲームは各キャラことも4章構成で,1人旅を続けてもいいし,途中で仲間を見つけて最大4人のグループで進めることも可能です。新しいキャラを加えると,まずはその人物の第1章をプレイするので,最初に選択したキャラが誰であっても,全メンバーの全ストーリーを追っかけられるため,周回プレイは不要。また,ゲーム自体に明示的な終幕というのが存在せず,最初に選択したキャラの第4章をクリアすればスタッフロールは流れるものの,その後もキャラを入れ替えて,残りのストーリーや多数用意されているサブストーリーを続けられるようになっています。
ストーリーはといえば,自分探しの旅であったり,親の敵を討つ旅であったり,稀覯書を捜す旅であったりと,キャラによって目的も行き先もバラバラで,物語のトーン(重さ)にも硬軟の差があるものの,基本的に複数のキャラ間の物語が干渉しないような構成になっています。そのため,どのキャラで進めてもハナシの矛盾は生じないのですが,人によっては若干淡泊に感じてしまうかも。
グラフィックは,フルHDながらキャラも背景もドット画で描かれており,古き良きSFC時代のRPGを彷彿とさせます。ただし,フィールドは被写体深度を浅くして箱庭風の雰囲気で表現されており,玉ボケやレンズフレアといった光学的表現や波紋,水の流れ,陽ざしや炎の表現,雪の降る様子,さらにはバトルなどにも“Unreal Engine”によるエフェクトが効果的に使われているため,2D風ながら全体的に古さを感じさせない画面設計がされていました。また,光源が南西にある想定で影が付いているようでしたが,フィールドを移動する度にオブジェクトに応じて影の付き方が変わったり奥行きのあるような表現が多々見られたことから,おそらくフィールドは3Dでモデリングした上で,ドット画のテクスチャーを貼り付け,カメラの移動方向を固定しているのではないかと思います。それゆえに,メーカーもこのグラフィックス表現を「HD-2D」という名前で呼んでいるのでしょう。
バトルシステムは,昔ながらのサイドビューのコマンド入力式ですが,ブーストとシールドという概念が取り入れられており,ターン毎に「ブーストポイント」を溜めて連続攻撃や強力な技を開放しつつ,敵の弱点を突いてシールドポイントを削いで「ブレイク」という攻撃不能の状態に持っていきながら撃破するという戦略的なプレイが求められます。特にボスは割とHPが高めに設定されているため,いかにブレイク状態にしてからブーストポイントを投入して高火力の攻撃をするかがキモになりますね。また,敵味方ともにドット画ながら丁寧に描き込まれており,さらに美麗かつストレスにならない長さのバトルエフェクトが華を添えてくれます。ブレイクした後に大技が決まったら,なかなか気持ちいいですね。
ユーザーインターフェイスは,今風の洗練されたメニュー構成になっています。ワールドマップのデザインもオシャレで,十字キーでもアナログスティックでも違和感のない操作感でしたが,バトル中に表示されるバフ・デバフの種類が多く,アイコンをパッと見ただけでは,どれが何の効果を指しているのか分かりにくいことはありましたね。あとは,アイテムのスクロール時に,アナログスティックでは止めたい位置になかなか止まらなかったことも(私だけ??)。チュートリアルも適切で,プレイヤーの成長曲線によく配慮されていると思います。
音楽は,「素晴らしい」の一言。本作の作曲家(西木康智氏)はこれまで知らなかったのですが,各キャラのテーマ,バトル,フィールド,舞台の緩急に応じた曲すべてが珠玉の出来映えでした。最近のゲーム音楽は,映画ライクというのか,場合によっては環境音楽みたいになってしまい,単独では聴く気にならないものも多いのですが,本作の音楽は古き良き(SFC時代の)JPRGを現代風に再定義した趣の曲調で構成されており,サントラを買っていまも聴いています。曲名も「バトル1」とか「ボスバトル2」とか直球だし(笑)。でも,さすがに時代が進んだからか,ほとんどの曲がサンプリング音源ではなく生録みたいです。
…というわけで,全体の感想はこんなところで,あとはよかった点・今後の作品で見直してほしい点を,思いつくままに以下箇条書きで記します。
よかった点
- ドット画PRGをHD-2Dという技術で現代に甦らせた点は偉大。ただ,最初目が慣れるまでは(画面の大きな)テレビモードではドット感が強かったため,キャラは縦横倍密度のRetine風に描画できないかな,とも
- (繰り返しになりますが)単独でも聞き応えのあるBGMの数々と良好なSE
- メインストーリー終了後も続くサブストーリーの数々と,裏ボスといったやりこみ要素(サブストーリーはテーブルトークRPG的な印象あり)
- 各キャラの章を進めても回収できないサブイベントがほとんどない点
- メインキャラクターのつかず離れずの距離感と特徴のあるストーリー。自由度のあるゲーム進行(ただし,フリーシナリオではなく,一巡ですべてのストーリーが完了)
- 忙しい現代人に優しい各章の探索ボリューム(1ダンジョン1〜1.5時間ぐらいでクリア可能)
今後の作品で見直してほしい点
- 一部のフィールド(森など)で画面の前面に覆い被さるオブジェクトが大きく,地形が見づらかったことも。Switchのホームボタンで一度画面を切り替えて元に戻ると最前面のオブジェクトが消えることに気づいたので,時折ゲーム画面→ホーム画面→ゲーム画面と戻って,フィールド探索したことも
- 起動時のロゴが多く(4種類),またスタートボタン(Switchでは『+』ボタンというのかな)でもスキップできず,ゲーム開始まで20秒ぐらい待たされるのがちょっとストレス
(…と思ったものの,調べたところ,裏でゲームエンジンを起動しているらしく,純粋に立ち上げに時間がかかっている様子。仕方ナイのかな)
- ボイスはミドルウェアにCRIWAREが使われているようで,音質も声優の技量も良好だったものの,フルボイスではなかったのがちょっと残念。メッセージが多いので仕方ない面はあるものの,シーンによってはボイス付きだったのが途中から無くなったり,その逆もあったため,Aボタン連打でうっかりボイスを聞き逃してしまったことも
- ゲーム内進行で,特定のキャラがいないと開けられない宝箱があるのが,微妙にストレス。そのため,宝箱コンプには常時特定キャラを加えておく必要があり,メンバー構成に若干の縛りが生じました
- 敵キャラはもう少しアニメーションしてもいいかな,とも。思い出補正が入っている可能性も大ですが,SFC末期のタイトル「ルドラの秘宝」の方が,バトルシーンの「ヌルヌル動く感」があったような気がします(※バトルエフェクトの派手さは本作の方が圧倒的に上ですが)
- (個人的な好みというか希望)1日の時間進行をゲーム内に取り入れてほしいかな,と。夕暮れ時のよう雰囲気の街もありましたが,朝・昼・晩でイベントが変わるような設計だけと,より探索方面の深みがでるかも
- (個人的な好みというか希望)自由度とのバーターにはなりますが,キャラ間を横断するストーリー展開や恋愛要素がもう少しあってもよかったかな,とも(「パーティチャット」という演出で日常会話を垣間見れるようにはなっていますが)
- 本質的な部分ではないですが,伏線が一部回収されていないような気が…
- 「セシリーその後」を見たかった(笑)
おまけ
本作について,開発関係者がいろいろな情報公開を行っているのも好感度大ですね(以下関連リンク)。現代のゲームコンソールで動くタイトルなので,ある意味ハード側のリソースは意識せず,「富豪的プログラミング」的に作られたのかと思いきや,チューニングしても起動に時間がかかったり,意外とメモリ管理に苦労していたりと,いくら性能が上がってもいつの時代も同じような悩みが(苦笑)。